怒り散らかさずにはいられない~その対処法を一緒に考えた話

前回の続き。

▶︎近所の子どもと幼稚園から帰ったらエライことになった話

(あらすじ;近所のNちゃんを娘と一緒に幼稚園から連れて帰った。Nちゃんのお母さんと行き違いになってしまい、夫婦もろとも怒鳴られまくった。あまりに激しく怒られたため固まってしまったが、ゆっくり整理した結果、翌日ちゃんと謝ることにした)

***

翌朝、幼稚園へ行くとき少し緊張した。

Nちゃんのお母さんに謝ろうと決めたものの…。

あー、まだめっちゃ怒ってたらどうしよう。

近所でやったみたいに、みんなの前でボロクソ言われたら嫌だなぁ。

珍しく神妙な顔をしていたのか、出発前に姑も夫もアドバイスをしてくれた。

心強い。

うん、がんばる。

幼稚園についた。

先生方もNちゃんも笑って許してくれた。

Nちゃんはお父さんと一緒だったが、お父さんは穏やかに会釈だけして仕事場へ行かれた。

幼稚園が終わる30分ほど前に、Nちゃんのお母さんが迎えにきた。

きたー、私のほうへやってくるー。

しかも、笑っとるーーーーー。こわーーーーー。

娘を待たずに帰りたいw

私が謝るより先にNちゃんのお母さんから声がかかった。

「昨日眠れなくて、さっき病院へ行ったの」

眠れないってなんで?

疑問に感じたことをそのまま尋ねた。

Nちゃんのお母さんは、私は心臓が弱いの、と言った。

昨日娘が見当たらないとわかった途端、心臓がドックドックと波打った。

夜になっても収まらず、食事もとれず、あらゆるお祈りの言葉を唱えたけどドキドキしっぱなしだった。

だから病院へ行ったんだと。

まだ言いたいことがありそうな素振りだったので、続きを促した。

「うん、だから昨日、私は大きな声で怒ったでしょ。あなたにもあなたの旦那にも。それって怒ってたんじゃないの。パニックになって、口から言葉を全部吐き出さないといけなかったの」

怒ってたがなとツッコミたい気持ちもあったが、思い留まった。

私にも理性があったらしい。

直接的な謝罪の言葉ではないし、聞く人が聞いたら言い訳にしか聞こえないかもしれない。

けれども、私には昨日の態度はまずかったと思っているように見えた。

もういいかーと思えた。

それより、パニックになったという発言のほうが気になった。

昨日の彼女の様子からもパニック状態だなとは感じていた。

まさか、眠れずに病院にいくまでとは。

「パニックになるまで心配したのよね。ごめんなさいね」

私は彼女をさすりながら謝った。

やっと謝れたぞ!

だけど、「うん、いいのよ」とは言ってもらえなかった。

謝罪には興味はなさそうだ。

謝罪よりも自分の話を聞いてもらいたいんだな。

彼女は、前日の出来事をもうひととおり話した。

私はゆっくりと相槌をうちながら聞いた。

彼女は自分のことをよく把握している。

心臓が弱いこと、パニックになったら言葉があふれてくること、逆にそれらの言葉を全部口から出すことで落ち着くこと。

これらを自分で認識できているのは素晴らしい。

それに、バツは悪そうだけど見事なほどに謝らない。

「そうなってしまったのだから仕方ないじゃない」とでも言いたげな勢いだ。

自責の念がないのはいいな―

嫌味で言っているのではない。

彼女には自分の体への理解と愛情がある。

自分を責めがちな私には羨ましささえ覚えた。

その良さを伝えたうえで、私はいくつか質問をした。

主に、いつものパニック時の様子とご家族の対応についてだ。

彼女はパニックになると、今回のように(ほとんど怒りの形で)感情や言葉を出し切るか、まったく何もできずになるかのどちらかになるそうだ。

去年の地震直後は、ご主人が声をかけも返答できず、ただ震えていたらしい。

ご家族は、ショックの強そうな話題を彼女の耳に入れないようにしたり、パニックになった場合は水を渡してそっとしておくのだそう。

実はNちゃんのお母さんは、たびたびご近所さん達と衝突していた。

ご近所さん達は、彼女は一旦怒りだしたら止まらない、うるさい、と言っていた。

いくつか実際の話を聞いたこともある。

「そこまで怒るの?」と思っていたが、今回の出来事と彼女からの話を聞いてわかった。

彼女はそうせざるを得ないんだ。

そうしないと、心臓のバクバクが止まらない。

とはいえ、怒鳴られる方は心象は良くない。

本人や家族は慣れているかもしれないが、近所づきあいにもヒビが入る。

彼女はジャワ島から嫁いできている。

自分から味方をつくらない限り、よそ者が田舎の村でやっていくのは難しい。

よそ者同士のよしみ。

何かいい方法はないだろうか?

*

私は思い切って、正直に自分の昨日の気持ちと今考えたことを話した。

「昨日は怒られて、いい気持ちではなかったよ。でも、今あなたが話してくれたから、あれはパニックが原因だったとわかったわ。自分のことがよくわかってるなと思った」

「うん…」

彼女は私の話を聞こうとしてくれている。

私は続けた。

「でも怒られると相手も負の感情を抱きやすいから、対処法を考えておかない?」

お節介かなとも思ったが、彼女の「そうだね」という声で我に返る。

この話を続けてもよさそうだった。

たとえば…と、私は彼女に「王様の耳はロバの耳」の話をした。

王様の耳がロバの耳であることを知り、王様から誰にも話さぬように命じられた理髪師が、それを秘密にすることに苦しむ話だ。

理髪師は土を掘って、そこに秘密を打ち明けスッキリする。

「この理髪師のように、誰かに怒らさなくてもいい方法はないかな?」

彼女に聞いたら、彼女は「あ!」と閃いた顔をした。

「それなら書き出すとスッキリするよ!」

「いいね!それ! 私もよくムシャクシャしたら紙に書き出して、その紙をビリビリに破いて捨てるのよ。スッキリするよね」

「あはは!」

ここまで話して、幼稚園が終わりの時間になった。

Nちゃんのお母さんは、「旦那さんに『昨日のは怒ってたんじゃなくてパニックだから!』って言っておいてね」と念を押した。

うん、わかったよと私は首を縦に振った。

帰宅後、夫に話すと、口をへの字に曲げた。

「そんな都合のいい話ですますなんて…」とでも言いたそうだ。

そりゃそうだ、夫はこれでもかというくらい怒られたんだもの、たまったもんじゃない。

多くの人の反応はこうだろうな。

お世話になった人にも「無事にこの件は終わりました」とご報告とお礼にいった。

「みどりがいいならそれでいいけど…」という顔も中にはあった。

それでも、彼女のパニックについてオープンにするほうがよいと思ったし、彼女もそれを望んだ。

これまでのこともあるから、近所の方々にNちゃんのお母さんが理解されるまでには時間がかかるかもしれない。

でも少しずつ、みんなでわかっていけたらよいな。

お互いがわかりあえない村より、互いの長所も短所もひっくるめて付き合っていける村のほうが断然すてきだものね。

(みどり)

関連書籍

▼「キレる私をやめたい ~夫をグーで殴る妻をやめるまで~」(田房永子)

突然スイッチが入ってキレてしまう人。

泣きながら怒ってるこの表紙を見て「これわたしだ」と思った人。

こんな人が身近にいる人。ぜひ読んで。私も読んだよ。

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