なんてことのない、いつもの料理が元気をくれる

地震のあと、避難キャンプ地で本当に本当に嬉しかったのは、ある日の朝食に卵焼きがでてきたことだった。

震災後の約二週間、朝食はほとんど毎日インスタントラーメンかインスタントラーメンにごはんを混ぜたものだった。

たくさんのインスタントラーメンが支援物資として箱で届いていた。
毎日味違いで食べられたり村の女性たちから下のような知恵を教えてもらえたりしたのは、楽しくもあった。

それでも、さすがに毎朝食べると飽きてきた。ごはんが食べられるだけでもありがたかったので、誰も文句は言わなかったが。

そんなとき、卵焼きがでてきた。

「わ、卵やん!」

私が思わず声をあげると、叔母が「ほぅら、卵だよ~」とおどけて、卵焼きののっている皿を両手に持ち、私の目の前でひらひらひら~と皿を泳がせた。

普通の卵焼きだけど、ピッカピカに見えた。

大喜びで食べたら、ピリ辛くてビックリした。

ロンボク島での一般的な卵焼きは、卵のなかにニンニクとエシャロットという香味野菜と小さな唐辛子をそれぞれみじん切りしたものが入っていることが多い。私たちがこの日食べた卵焼きにも、これらの香味野菜と唐辛子が入っていた。

中華鍋に多めの油を熱し、卵液を流し込み一気に揚げ焼きするため、両面がこんがりとした満月のような卵焼きになる。

そうだ、ロンボク島の卵焼きは辛いんだった。忘れていたよ。

今日、娘が卵焼きを食べたいと言った。

あの日食べたようなロンボク風の卵焼きにしよう。娘のために唐辛子はぬいて、ニンニクとエシャロットと香菜(シャンツァイ)とニンジンを小さく切ったものをいれた。

娘はおいしいとたくさん食べ、夫の分がなくなってしまった。

夫は「いいよ」とほほ笑んだ。

本当になんてことのない、日々の食卓にでてくるいつもの料理とささやかな会話。

これにどれだけ価値があるか、これでどれだけ元気がわいてくるか。
知ることができた私たちは幸せだと思った。

(Midori Rahma Safitri)

※この記事は、noteに 2019年11月5日初出したものです(noteアカウント不調のため移動)