わざと子どもを泣かせる夫と一つ一つ話し合った話

娘プーちゃんが泣いた。

急にスマホ画面が真っ黒になって、何もできなくなったらしい。

スマホを触ると熱くなっていた。

あー、こりゃアプリ使いすぎて重くなってんだね。

「ちょっと携帯を休ませよう。プーちゃん、ほかのことで遊ぼうね」

プーちゃんが泣きながらもほかのことで遊ぼうとしはじめたころ、庭で釣り具の手入れをしていた夫が中に入ってきた。

なんでプーちゃんが泣いているのかと問うので、事情を説明した。

ところが、夫はプーちゃんに「ハンッ。スマホで遊んでばっかりいるからだ。もうこれ壊れちゃったよ。遊べないよ」と言い捨てた。

娘は火が付いたかのように泣いた。

私はガックリし、その失意はすぐに夫に対しての苛立ちへと変わった。

やっと泣き止んで別の遊びをはじめたのに、なんてことをしてくれるんだ。

なんでわざと泣くような言い方をするんだ。

私が夫に対してイライラしているあいだも、プーちゃんは泣きどおしだった。

夫もいよいよ腹がたってきたようだ。

自分のすぐ近くで泣かれ続けるといい気がしないもんな。

夫は「いい加減に泣き止みなさい」と、プーちゃんにきつく言った。

私は「自分で泣かせておいて、何言ってんのよ」と夫に対してますます腹を立てた。

よりにもよって断食月に声を荒げるのかよ~(断食月は心を落ち着けなければならず、怒ったり泣いたりするのはよくないとされている)。

ああ~、なんか悪循環に突入しているな。

イライラがイライラを引き寄せて、家族で一大イライラ集団になっているぞ。

ここで落ち着かないといけないのはわかっちゃいるけどさぁ、ぶおーーーー。

すでに着火していたみどり銃はとめられずに暴発した。

「プーちゃん、いつまでも泣くな。アディ(夫)、あなたもそんな怒り方しないの! 断食月なんだからやめてよね」

断食月に怒ってはならぬのはそのとおりなので、夫はこれ以上私も夫もヒートアップしないように、いそいそと庭の隅にあるブルガ(東屋)へと移った。

プーちゃんは最後にはママにまでも怒られて、まだ泣いていた。

しかし、しばらくしてからゆっくり話しかけると、プーちゃんはなぜパパに怒られたのかは理解していた。

目が悪くなるのにスマホで遊びすぎていたから、とのことだ。

でも、パパにもママにも泣くなと言われることはよく理解できなかったらしい。

勝手に涙はでてくるのに、なんで泣いちゃいけないのと言いたげだった。

なるほど。一理あるな。

私は考えた。

プーちゃん、それはパパとママが悪かったね。

パパとママは今断食をしていて心落ち着けなければならないんだけど、プーちゃんに泣かれると心がざわつくんだよ。

だから、心ざわつく原因になっているプーちゃんの泣き声を聞きたくなかったんだよ。

そう言えばよかったね。

いや、そもそも断食はパパとママの事情だし、プーちゃんの泣き声でイライラするのはパパとママの未熟さだね。プーちゃんのせいじゃなかった。ごめんね。

次は夫の番だ。

夫はよくプーちゃんが泣くようなことをわざと言う。

泣くとわかってるのに、よくあんな言い方するよね。スマホが壊れたなんて言ったら、泣くに決まってるじゃない。毎回同じパターンなのに、ほんとになんでわからないのよ…。

頭の中で思い返しながらハッとした。

「あれ?もしかして、夫は娘が泣くってわからなかったのか?」

そんなバカなと思ったけど、わからなかったのだとしたら辻褄が合う。

ブルガへ行って、夫に訊いてみた。

「ねえ、さっきのことだけど。あんな言い方してプーちゃんが泣くの、わからなかったの?」

「うん」

夫はイタズラして捕まったあとの少年がてへへと頭を掻くのような顔で笑った。

まーじーでーーーーー。

わからへんとかあり得るの?

プーちゃんはいつもいつも同じパターンで泣いてるのに。

ってか、パターン化してることもわかってなかったの?

私は呆れた。

わからないのに毎回同じ言い方で泣かせ続けていたなんて、なんかある意味すごいぞ。

一方で、ほんとにわかってなかったんだと少しホッとした。

わざと泣かせているんじゃないんだ。

わかっててやっているなら質が悪いけど、わかってないなら…。

仕方ない…のかな。

いや、アホなのか?

私は夫に、プーちゃんに泣かれたくないよね?と確認した。

夫は首を縦に振る。

一応、泣かれたくはないようだ。

私は続けた。

あの言い方ではプーちゃんはスマホで遊べないのと、パパに怒られたショックとで二重に悲しいんだよ。だから泣くよ。

プーちゃんは、どうしてパパがスマホで遊んでばっかりじゃダメと言うのかは理解してる。

でも、私たちの言い方には納得してなかった。

だから、あなたも落ち着いた言い方をするといいよ。

「落ち着いた言い方って?」

「だからさ、怒ったり意地悪言ったり、悪い冗談言ったりしないってことよ。たとえば『プーちゃん、目が悪くなるからスマホで遊ぶの休もうか』って言えばいいの」

「そんな言い方だとスマホやめなくない?」

「え、大丈夫だよ。このあいだみんなで約束したじゃん。」

「…?」

夫は約束を忘れたようだった。いやいや、思い出して~。

夫ともう一度約束の再確認をした。

・スマホで1時間遊んだら休憩すること
・スマホをみるときは座って目から離してみること

「思い出した? ちゃんと約束してるから『スマホで遊ぶときは約束まもろうね』って言えば、プーちゃんは守ってくれるよ」

「え~?」

「ほんまやって。今のところ、それでうまくいってる」

夫は、夫の父親がそうだったように、バシッと怒ったほうが父親としての威厳を保てると思っている。

だが、プーちゃんは怒られると、パパやママがプーちゃんのことを嫌いになったと感じて、恐怖とショックをうける。

パパが怒っているから怖いんじゃなくて、パパに嫌われ見捨てられる恐怖を感じているんだよ。

私、これまでに何回もプーちゃんと話してるから。

…ということを一から説明する。

前も説明した気がするんだけどなー。だけど、覚えていなかったならまた伝えるしかないよね。

それに、私はプーちゃんとほとんどずっと一緒にいるけど、夫は外で働いている間はあまりプーちゃんと一緒にいなかったし、家にいても疲れているから深い話までしなかったものね。

私もまさか夫が「わざと」娘を泣かせているのではないなんて、知らなかった。

それに、プーちゃんと話したこともシェアし続けていなかった。

同じ家の中にいるのに、知らないことがたくさんあるんだな。

私たちは、まだまだ知り合える。わかりあえる。

あまり外出のできないこの機会+断食月のあいだに、もっと心を開いて家族といろいろな話をしよう。

(Midori Rahma Safitri)