シアーン(こんにちは)、みどりやで。
いやー、さっき怒った怒った、娘のこと。
自分でいうのもなんだが、私は普段、娘の声にしっかり耳を傾けているつもり。今日は自制が利かなかった。
*
事の発端は、前日に私が娘に絵筆と絵具を買い与えたこと。
ずいぶん前からほしがっていた娘は大喜びで絵を描いた。
停電だったので、停電時にも灯るランプをつけている、玄関前のテラスで描いた。
ちょうどハロウィンの日で、絵もハロウィン仕様。
持ち手のところなど上手にハサミを使っているし、何も見ないでこんなに描けるとは驚きである。
服も黒と紫に着替えて、いいかんじ。
近所のおうちを三軒まわってハロウィンは楽んだようす。
が、片付けずにそのまま寝た。
実はこの日、私は用事で丸1日街へ出かけていた。
夫に仕事を休んでもらって、娘を夫に預けたが、娘は何度も泣いたそうだ。
泣き疲れていたのかなぁと思い、翌朝片付けてもらう算段をたてた。
*
娘は、今朝も起きてからすぐに絵を描き始めた。
気に入ってもらえたようでうれしいな~。
あっというまに、娘は絵本に出てくるようなイチゴ畑を描き切った。
少し乾かすために、しばらく玄関テラスの床においておくことに。
昼前に通り雨が降った。
乾かしている絵が湿ってしまうし、何よりいい加減に片づけたら?と言った。娘は生返事をして、Youtubeを見ていた。
そして、事件は起こった。
↓このとおり
娘、朝からすっごくウキウキするイチゴ畑の絵を描いた🍓
散らかしたまま次の遊びへ。
絵筆も絵の具も水皿もそのまま。
猫が荒らすと絵が汚れるから片付けたら?と言っても聞かず。さっき猫が絵の上にネズミを置いたあげく嘔吐までしていった🙀
ステキな絵だったのに😢
懲りるかな?— みどり(Fitri)🌱みんなのお母さん (@hijau39) November 1, 2019
まずはじめに、こんなソフトな書き方をしてしまったことを、Twitterのフォロワーさんにお詫びする。
ネコが食いちぎったネズミを絵の上に置いたのも、その横に嘔吐していったのも本当のことである。ステキな絵だったのも事実だ。
しかし、最後の「懲りるかな?」までに省略されていることが多すぎる。
ここに省略事項を紹介したい。
*
ネズミ&嘔吐を報告してくれたのは、誰でもない娘だった。
私は、そのとき料理をしていた。
夫は、モスクへ合同礼拝に行っていた。
夫が帰ってきたら一緒に昼ごはんを食べよう。
昨日は一品も作ってないし。
今日は腕をふるうぞー。
わかります?
つまり、かなーり集中して料理していたのだ。
なのに、邪魔が入った。
ネコめ~。
このときは、ネコめ許せんと思っていたのだよ。
娘の絵を汚すなんて!と。
娘に絵を捨ててもいいかときいたら、「また描くからいいよ」と案外平気そうに言った。
そして、イチゴの絵+ちぎれたネズミ+吐しゃ物を見た瞬間、頭の中の何かがプチっとはじけた。
はじけたまま大きなスコップをもって、それらを庭に埋めた。
マンゴーの木の下からスコップをとるときに、ツンと尿の匂いがした。
ああ、姑が庭で尿を足したんだな。
昨日から足が腫れていてトイレまで歩けないもんな。
ああ~!
ネコも許せない。
姑の尿の匂いも許せない。
料理の集中ピーク時に私を呼んだことも許せない。
何もかもが許せない。
でも、一番許せないのは娘だ。
おめーはよぅ、自分の作品をよぅ、こんなふうに汚されてよぅ、悔しくないのかよ!
よぅよぅよぅ!
私はねぇ、悔しいよ!
こんなにこんなに愛らしいイチゴ畑だったのに!
みんなに見てもらいたかったのに!
まだ写真とってないのに!
ウガーーーーッ。
私は怒った。
それはそれは猛然と娘に怒った。
あんなに片づけたらって言ったのに!
片付けへんから絵がダメになったやん!
毎日毎日毎日、何度も何度も何度も、一つ遊び終わったら片づけなさいって言ってるのに!
なんで片付けないの!
掃除をしている前の家のおばさんがチラッとこちらを窺うのが見えた。
目が合ったけど知るか。
止められないんだ。
片付けへんのやったら全部捨てるで!
全部捨てるか。片づけるか。
選べーーーー!!!!!
娘はワンワン泣いた。
自分のしたことに反省して泣いているのではなく、私の形相と怒られることそのものへの恐怖で泣いた。聞いてないけど、それくらいは私もわかる。
(ちなみに、過去にままごとセットをすべて捨てられた娘。本気で捨てられることは身に染みている)
*
娘は泣きながら片付けをした。
私は料理に戻った。
台所にいるあいだ、なんだか娘があちこち動いているなぁという気配はしていた。
料理がひと段落ついて娘の様子を見に行ったら、娘は片付けたばかりの玄関のテラスで布をかぶって寝たフリをしていた。
「プーちゃん、なんでここで寝てるん?」
問いかけたが、返事も動きもない。
寝ている横に、紙の箱があった。
昨晩食べたマルタバッ(スナック)の持ち帰り用の箱だ。
中に、Tシャツ1枚とパジャマ1組、ショーツ1枚、大好きな耳ネコヘアバンド、お菓子と飲み物も入っている。
「ナニコレ?ええのん作ったやん」
娘はニヤッと笑いながらふて寝(のフリ)から起きてきた。
「これ、サバイバル・ボックス」
「ええやん。ここでサバイバルするん?」
「うん、プーちゃん、ここで寝る」
ほほぅ、家出してるわけね。
娘に、何で怒られたかわかるかと尋ねた。
よくわかっていなかった。
ということは、理不尽さと怖さの両方を感じているはずだ。
プーちゃん、ママはね。
プーちゃんのかわいいイチゴの絵がダメになって悔しかったんだよ。
でさ、片付けていたら、そうならなかったのにぃと思ってさ。
自分の絵具も絵筆も絵も大事にしない。
いつも言ってるけど、片付けないってことは大切に扱っていないことだとママは考えているからね。
何回も同じこと言ってるのにいい加減にしてよって腹が立ったんだよ。
でも、プーちゃんにとっては、大事にすることと片付けることは別物なのかもしれないね。
それにさ、あの言い方はなかったね。
ごめんね。
娘ははじめプンっとそっぽを向いて、許してくれた。
玄関でのサバイバルが気に入ったらしくて、しばらくそこで庭を眺めながらサバイバル・ボックスのお菓子を食べていた。
モスクから夫が帰ってきた。
娘は夫と一緒に家に入ってきて、娘のはじめての家出が終わった。
懲りるかな?
(Midori Rahma Safitri)
※この記事は、noteに 2019年11月1日初出したものです(noteアカウント不調のため移動)
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