現在のまじない師は号泣する娘に何を話したか

昨夜、娘・プーちゃんが虫に刺された。

足の指にチクッと痛みが走り、いつものようにアリかと思って手で払いのけたら手にもチクッ。お隣さんどころか三軒先くらいまで響いているんじゃないかと思うほどの大きな声で泣いた。

アリにしては激しい泣き方に娘の足元を見やると、なんと小さなハチがヨタヨタ歩いているではないか!わあ、これは痛いわ!

すぐに夫にバシバシ叩かれてハチさんは昇天。さようなら~。

まったく泣きやむ気配のない娘に、夫がインドネシアの虫刺され民間薬・バワンメラ(シャロット。小玉ねぎのような香味野菜)の汁を塗りながら、自分の子どもの頃の話をした。

「僕もハチに刺されて泣いたことがあるよ。果物の木に蜂の巣があったんだけど、気付かずに実をもいだら刺されたんだ。いっぱい刺されて痛かったけど、すぐにバワンメラを塗ったから次の日には痛くなくなっていたよ。プーちゃんも明日には痛くなくなっているからね」

娘は少しずつ落ち着きを取り戻し、やがてそのまま眠りについた。

今朝、娘は起きて早々「おなかすいた~」とご機嫌だった。

「足はどう?」

「もう痛くな~い」

「あらそう。よかったね。パパの言ったとおりだったね」

娘はすぐにまだ寝ているパパのところへ行き、「パパー、パパー、痛くないよーーー!」と報告。パパから「プーちゃんはスーパーガールだね」と言われて嬉しそうにしていた。

それを見ながら私は、「いよっ、パパ、殊勲賞~~!!」と心の中で拍手を送った。夫が娘に明るい未来を提示したからだ。

もう10年以上前だが、母から興味深い話を聞いた。母もテレビで見たか本で読んだかの話だと言っていたので出所は確かではないが、たしかこんな話だった。

アメリカで日本の青年が事故にあい、足を切断することになった。医師は「君は足を切断してもこういうことができるんだよ」と車椅子でスポーツをする人々の写真を見せてくれた。

彼は述懐する。あのとき医師が「君は足を切断するから、もう歩けなくなる。あれもこれも、できなくなる」とできないことを並べなくてよかった。足がなくてもできることを示してくれて大きな希望になった、と。

足の切断に比べたら、虫刺されによる痛みはたいしたことがないのかもしれない。けれども、娘にとっては一大事。なんせ今まで経験したことがないほど痛かったのだから。

自分の見解では問題ないけれど娘は痛くて不安を感じていることを、夫はしっかり理解していた。そして、「明日には痛くなくなっている」と明るく安心できる未来を示してみせたのだ。

その証拠に、娘はハチのことなど忘れたかのように昨晩はよく眠れたと言っていた。パパ、大殊勲!

夫の父親は呪術医だった。マッサージをしたりマントラを唱えたりすることで人々の病気を治すまじない師だ。夫はそういったことはできない。しかし私には、昨晩の夫は現在のまじない師に見えた。

夫が慌ただしく出掛けたのでまだ伝えられていないが、今夜にでもあれは素晴らしかったと伝えたいと思っている。

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